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 某不動産会社の人と、法人化したマンション管理組合に管理会社を役員として就任させることはできないよね、っていう話をしていた。



 ここで言う、「法人化したマンション管理組合」というのは、区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)第47条1項に規定されている管理組合法人のこと。管理会社が実質的な管理業務を一括して引き受けているのだから、管理組合法人の理事は名目上の存在に過ぎなくなり、登記簿に公示する必要性も必然性もなくなるのだから、理事を全員退任させて、代わりに当該管理会社を役員として就任させることは可能かどうか、という趣旨で、当然、それはできない、ということは相手もさすがにプロなので、できない、という話はそれとなく理解している。



 なぜかと言えば、同法第49条において、「管理組合法人には、理事を置かなければならない。」とされており、代表権を持たない平理事であっても、全員退任はできない。また、会社などの「法人」は理事に就任できない、という明文の規定はないが、解釈上、理事の資格要件は一般社団法人の「理事」と同様の扱いであるべきとされているから、管理会社が管理組合法人の理事として就任することもできないからである(『基本法コンメンタール――マンション法――』日本評論社など参照)。



 となると、世間的には、管理会社に管理を一括委任しているマンション管理組合と管理会社との関係はどうなっているのだろうか、疑問に思う向きもあるかと思うが、殆どの場合、国土交通省が定めている「マンション標準管理規約(以下、「標準管理規約」)」及び「マンション標準管理委託契約書」が用いられている。



 そもそも、区分所有法上、管理組合を法人として登記する義務はない。管理組合を法人化するかどうかは任意であり、区分所有者の総意で決めることである。同法49条において、理事を置かなければならない、とされているのは、あくまで区分所有法上の「管理組合法人」として登記しているものだけである。日本全体として見れば、管理組合法人として登記されているマンション管理組合の方が例外的であり、日本の殆どのマンションでは法人化していない管理組合が組織されているわけである。



 あまりに人口に膾炙した表現なのであらためて考えてみる人も多くはないと思うのだが、そもそも「管理組合」という表現自体、区分所有法には存在せず、同法第3条においては「区分所有者の団体」という表現が用いられているだけである。では、世間的にいう、「管理組合」というのはどこから来た表現なのかというと、マンション管理士の資格や管理業者の登録制度を定めている、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」の第2条、及び、国土交通省が策定している「マンション標準管理規約」上の表現として用いられているものなのです。



 同様に、不動産会社の社員などが業務上よく用いる「理事」とか「理事会」というのは、「標準管理規約」上の表現を指して言っている場合が多い。標準管理規約があまりに普及しているために、大本の根拠法令である区分所有法上の表現よりも、標準管理規約上の表現の方が一般に広く用いられているわけです。区分所有法上は、理事は管理組合法人にしか置かれない機関ですし、「理事会」については何の規定もありません。逆にいうと、標準管理規約上の「理事」や「理事会」というのは、あくまで「規約上の役職」に過ぎず、法定の役職名ではないわけですね。



 冒頭の話に戻すと、「理事を全員解任して管理業者を選任する」ということの意味は、管理組合法人でない、マンション管理組合が、その規約上の役職をすべて解いて、管理業者に管理業務を一任する契約を結ぶ、という意味として解釈するなら、それは当然可能ですね、という話になる。もともと法定の機関ではないのだから全員解任してもまったく問題がない。ところが区分所有法上の管理組合法人となると、話が違ってくる。



 もし仮に、既存の管理組合法人が理事を全解任して、管理業者に業務を一任したい、という趣旨であれば、法定機関である理事の全解任はできないから、法人の解散を決議して、通常の管理組合に戻った上で、管理規約上の理事を全解任して業務を全部委託する、という形になるだろう。



 なぜ不動産会社や管理組合が管理会社に業務を委託するにあたり、理事を全解任したがるのかと言えば、まず、理事のなり手がいないこと、標準管理規約において理事長は区分所有法上の「管理者」とされているため、第一義的には管理業務の責任を負わなければならない立場にあること、などがあり、その負担を避けたいという意図がある。法人化していない管理組合ならば理事の全解任は規約に反しない限り可能であり、管理業務の一括委託も特に否定されていないことから、このような形態は今後も増えていくことが予想される。この点、管理組合法人の理事に管理会社などの「法人」が就任できるようにするような法改正も、立法論としてはあり得るかもしれない。

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