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 よくある疑問だと思うのだけど、株主総会を開催した時点で株主名簿上の株主の一人に共同相続が生じている場合、当該株主の共同相続人は「議決権を有する株主」としてみなされるのか、あるいはどのように取り扱われるのか、という問題がある。



 まず、大前提として、株主に相続が生じた場合、株式は相続分に応じて当然に分割されるわけではなく、相続分に応じた「準共有」状態になる。




 会社法第106条では、株主が準共有の状態にある場合の取り扱いが規定されており、




「株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。」




 とされている。


 
 準共有状態において権利を行使する者の定め方については、共有物の管理行為として民法第252条が適用されるので、持分に従いその持分価格の過半数で決定する。共同相続により生じた株式共有の場合にも、相続分に応じた持分の過半数で権利行使者を定め得るとする判例があるので(最判平9・1・28判時1599号139項)、基本的には共有者の持分多数決で権利行使者を決めればよい。




 権利行使者を一人決めなければ、株主総会において株主としての権利を行使することができないので、株主総会の成立要件、および決議要件の「議決権を行使することができる株主」(同第309条等)にこれら準共有者を含める必要はないと考えられる。




 一方で、106条但し書にあるように、会社が同意した場合はどうか。判例では、民法の共有の規定に従った権利行使者の決定がなされていない場合、会社が同意をしても権利行使自体は適法にならないとしている(最判平27・2・19民集69巻1号25項)。また、会社の方から議決権を行使する者を決めることも許されない(最判平11・12・14判時1699号156項)。なので、共同相続人間で権利行使者を決めなければ議決権の行使は宙吊りになるわけですね。会社の方から一方的に、「貴方が行使してください」と言うことはできない。




 ただし、登記申請の際に添付する株主リストには「議決権を有する株主」を記載しなければならないわけですが(商業登記規則第61条3項)、ここでは「議決権を行使できるか否か」は問題とされていないので、株主総会開催時において会社が共同相続人について知っていたか否かで記載の方法が変わってくることに注意(法務省HP参照)。仮に総会開催時において共同相続人が権利行使者を会社に通知しておらず、議決権を行使できなくとも、これらの者を「議決権を有する株主」として扱うのである。




 発行株式数が少数の会社において株主の一人に共同相続が生じたような場合で、実質的には権利行使者の決定が経営承継者を決定することを意味するような場合においても、この考え方は踏襲されるので、若干の疑問は残るわけだが(このような場合においては、共同相続人全員の同意で決めるべきとする考え方もある。江頭憲治郎『株式会社法(第6版)』p.123.を参照)、判例の見解を踏襲するならこのような場合においてもあくまで共有者の管理行為とみなして持分多数決によって決めることができるとされる。




 いずれにせよ、中小企業の少数株主の共同相続には要注意である。後日の紛争を避ける意味では、遺産分割と同様の考え方で共同相続人の総意で権利行使者を決定するのが妥当かもしれない。無論、相続人間が不仲であれば話は纏まらないので、記事にある通り、あらかじめ遺言で権利行使者を決めておくのも一つの方法である。また、共同相続が生じた場合の権利行使者を定款で予め定めておく方法も有効である。

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