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- 04/28 [PR]
- 03/04 「鎌倉」という「小都会」
- 02/23 私の作法
- 02/16 「昭和41・1・20民事甲第271号民事局長回答」の射程
- 02/14 会社分割の「対価」について
- 02/08 ストック・オプションの発行と「行使の条件」
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鎌倉は移住者の街として成り立っている面がありますね。意識高めな人たちが多様なライフスタイルを実践している地域なので、なぜだかノマド的な感性を持った人を惹きつける。そしてなんら必然性は見当たらないのですが、家屋のDIYや地域住民の互助活動も盛んであり、オーガニックな生活を実践する人たちにも人気がある。通勤距離の長さも、そこに住む満足感である程度相殺してくれるのだろうと思う。当然、休日は混むし、道路は狭い。しかも不動産は割高。けれども、毎朝サーフィン(夏場限定)をしてから東京に通勤している人も一定数いるし、鎌倉住みの会社役員なども多い。つまり、住みたい人が住む街です。
思うにこの「心地よさ」なるものは、多分に都心との絶妙な距離感が齎すものであり、都心の生活と殆ど繋がりがない人にとってはあまり実感できないものでもあるかもしれない。彼らのすべてが、というわけではないかもしれないが、鎌倉に住んでいてもなお都会人的な心性を捨てきれない人が多いのである。そして「鎌倉推し」の記事の少なくない部分は、そういう人たちによって書かれている。
しかし、より静かな生活を求める人には、あえて隣の逗子や葉山、あるいは西湘地域の大磯などがいいと思う。そこそこのキャリアに至り、前途がおおよそ見えてきた時期に、東京の持ち家を手放して2軒目、3軒目を検討するならこの地域はお勧めできる。住めば都、とは言え、鎌倉の住みやすさというのは、そこに「小都会」がある所以でもあるように思われてならない。
なぜノマドやオーガニックな生活を実践する個人主義者が鎌倉に住みたがるのだろうか。それは、そこに「東京」があるからに他ならない。
立案担当者と飲みの席で会合するということは、いついかなる時でも、与えられた質問に対して的確な回答をするという訓練も兼ねているのかもしれない、
というのは冗談だが、役人たるもの、「状況」に左右されずに正しい回答をし続けるべきであると感ずる。
私は採用された当時、当時幹部だった某氏の発言に違和感を抱き、「それは刑事的な発想だ、民事的でない」と感じたのだが、今でも当時の考えは変わっていない。己の信を持つためには考え抜かなければならない。そして疑い続けなければならない。義理と人情で仕事をしているわけではない。各々が、もちろんそれなりに信を持っていると思う。だから私は信を持った人を信じることができる。それは戦うことができる相手だからである。
正しさ、には常に「根拠」と「確からしさ」が求められる。確からしさ、と、根拠、は異なる。根拠はロジックだが、確からしさはレトリックである。ロジックは法廷で勝つために必要な作法だがここは法廷ではない。だから私はレトリックを使う。正しさは、ロジックだけに担保されるものではないと思います。そういうものも、私は作法だと思う。
重要先例に関する考え方が資格者内でも分かれている事案があり、法務省民事局商事課としてはどのような考え方をしているのか、あるいは実務家としてはどのような考え方をすべきなのか、少し整理する必要があると考えている。
その先例とは、以下のようなものである。
「定時株主総会において現任取締役の全員の将来の予選をなし、候補者は全員承諾をし、同日、取締役会において従前の取締役全員で将来の代表取締役を予選し、候補者は承諾をした。この場合において、将来の任期満了後直ちに従前の役員全員が重任(再任)されることの登記は受理できる。」
ただし、これには条件が付与されており、①予選決議当時の取締役と再選後の取締役が全員同じメンバーであること、②予選の期間が合理的な期間であること、が必要である(昭和41・1・20民事甲第271号民事局長回答)。
この先例の基本的な考え方はこうである。以下は私見による。
会社法第362条3項では、「取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。」としており、これは、現任取締役の中から代表取締役を定める権限を取締役会に与えることを明確に規定したものである。取締役は株主によって信任され、その職務を行い、会社の代表者である代表取締役は、その株主の信任を受けた取締役が構成する取締役会によって選ばれることに、その正統性の根拠がある。
取締役は、任期が満了すれば株主の信任を再び問わなければならないのであるから、任期満了直前の時期に行った将来の代表選任決議は、その予選を行ったメンバーが次の定時株主総会でも再選されることで、初めてその効力を付与されると考えられる。仮に現任取締役と、予選された取締役が一人でも異なるとすれば、現任取締役で構成される取締役会で選任される将来の代表取締役の正統性を担保できなくなるので、これは認められない。
株主は、取締役に対して、代表取締役を選任する権限を付託しているのであるから、現行の株主の意向を反映していない取締役が構成する取締役会の決議にはそもそも株主の意向が十全に反映されているとは言えない。現任取締役が予選決議で全員再選されるならば、同じ取締役によって構成される取締役会が決議する、将来の代表取締役の予選にも正統性の根拠があると言えるから、これは認めてよい。
つまりポイントは、定時株主総会で任期満了となる取締役が来期も再選されることが確実であるか否か、に係ってくることになる。
こうしたポイントを踏まえて、事例ごとにこの考え方を検討してみる(適宜、アレンジを加えている)。
<事例①>
取締役ABC(代表取締役A)の取締役会設置会社において、3月26日の臨時株主総会でDを4月1日付で取締役に選任(予選)するとともに、同日の取締役会で4月1日からの代表取締役としてDを予選することができるか。
これは、できない。なぜならば、3月26日時点ではDは取締役ではないため、予選決議を行う取締役会に参加できず、従って、Dが取締役に選任されることを前提とした代表取締役の予選決議は取締役会決議として有効にならないからである。Dがメンバーに含まれていない取締役会の決議においてDが取締役の地位に選任されることを前提としたDの代表選任決議を行うことには何ら正統性がないのである。
<事例②>
取締役ABCD(代表取締役A)の取締役会設置会社において、3月20日の取締役会において、4月1日付で増員代表取締役Bを選定(予選)し、同日、同人はその就任を承諾。その後、3月28日に取締役Dが辞任。4月1日に、予選で選任された代表取締役Bが就任することは可能か。なお、当該会社の事業年度は1月1日から12月31日までである。
先ほどの先例を中途半端に理解していると、取締役会の予選後にメンバーが変わっているのだから、これは受理できないのではないか、と判断する人もいるかもしれないが、事業年度に着目すれば、これはABCDの任期中に代表取締役を予選しているのであり、現任の4人が行った予選の効果は事業年度を跨ぐことがない。従って、定時株主総会で新たに信任を受けなくとも、当該取締役が構成する取締役会が行った予選決議は完全に有効なものと解される。
<事例③>
取締役ABCD(代表取締役A)の取締役会設置会社において、3月31日付でAが一身上の都合により取締役を辞任することになり、代表取締役を退任することになるため、3月20日の取締役会において、4月1日付で後任代表取締役Bを選任(予選)し、同日、同人は就任承諾。3月31日にAが辞任届を出し、4月1日付で代表取締役Bが就任する登記は受理可能か。なお、事業年度は事例②と同様である。
これも、事例②と考え方は同じ。事業年度を跨いで予選を行っているわけではないので、3月20日の取締役会の予選決議には正統性の担保がある。将来Aが辞任し、新代表が就任するまでの間にメンバーが変わるとしても、現行の株主に信任を受けているメンバーによって構成される取締役会の決議に瑕疵はない。従って、Bの代表取締役への就任は不確定な状況に左右されることなく、完全に有効なものである。
むしろ、このような事案において、Aが「辞任」ではなく、「死亡」した場合においても条件は同じである。本事例のように、代表取締役が将来退任することが予定されている場合のみならず、突発的な事態が生じたことで予選決議時のメンバーと新代表就任時のメンバーに差異が生じる場合において、このような予選決議に瑕疵があると解することは不合理な結果を生じるわけで、そのような観点からもこの結論を支持し得る根拠がある。
<事例④>
取締役ABCD(代表取締役A)の取締役会設置会社において、3月20日の取締役会で4月1日付で代表取締役Aを選任(予選)した。その後、3月26日の臨時株主総会において取締役BCDの3人が解任され、新たに取締役EFGが就任した。4月1日付で代表取締役Aが就任する登記は受理可能か。なお、事業年度は事例②と同様である。
A以外のすべてのメンバーが変わったことで、多数決を原理とする取締役会のパワーバランスが著しく変化したことは事実であろうが、このことはAの代表取締役予選決議に何ら影響を及ぼさないと考えられる。というのは、仮にEFGがAの代表選任に異議を持っているとするなら、4月1日以降の取締役会においていつでも解任できるからである。ここでAを代表取締役とする予選決議を認めたとしても、予選の期間が合理的であれば、結果として株主共通の利益を著しく損じることはなく、また、Aの代表権についていつでも解任権を発動できる状況にあることから、これを認めない場合の不利益と比較しても、先例の考え方から外れるものになるとは言えない。
そもそも、こうした事案においては、①「決議の成立自体に条件又は期限が付されているのか」、あるいは、②「決議自体は有効に成立し、単にその効力発生に条件又は期限が付されているのか」、を分けて考える必要があると思われる。
任期満了前の取締役が構成する取締役会において行われる代表取締役の予選は、決議そのものの成立が、定時株主総会で再選されること、すなわち、株主によって信任を受けることを条件としている。それに対し、事業年度途中における同様の予選は、「決議の効力発生に期限が付されているもの」と考えることができる。この場合、決議そのものは完全に有効に成立しているのであるから、その後の事情の変更は、その決議自体に影響を及ぼさない。
しかし、上記①においては、決議の成立自体に条件が付されていることから(具体的には、現任取締役全員の再任)、この条件の不成就によって、当該決議は確定的にその根拠を失う。謂わば、その決議には「正統性がなくなる」のである。一方で、事業年度中の取締役が行った予選行為は株主の信任を受け、その正統な権限付与によって将来の代表取締役を選定しているのであり、その行為には「正統性がある」、と言えるだろう。
ここまで意図して「正統性」という表現を用いてきたが、これは、会社代表者としての「代表取締役」とは、株主から取締役を通して、間接的に、与えられた正統性があり、会社法第362条3項はその根拠を具現化したものであり、昭和41年の先例は、その主旨を強調したものと考えることができるからである。このような考え方を糸筋として、個別事案ごとに先例の射程をより詳細に検討する必要があると感じている。
吸収分割において、承継会社Aが分割会社Bに対して分割対価として株式以外を交付する場合、分割契約において「当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法」を定めなければならない(会社法第758条4号ホ)」。
では、金銭を交付する場合において、分割する事業の価格算定の基準時点(一般的には効力発生日の直前)から効力発生日までの価格変動を見込んだ調整条項を分割契約書に織り込むことは可能だろうか。以下は私見であることをお断りしておく。
一般的に、グループ会社ではない株式会社間の吸収分割契約において分割の対価を金銭のみと定めている場合、契約締結からクロージングまでの期間の長さを反映して、価格算定の基準時点と効力発生日時点の企業価値(事業価値)の変動を織り込んだ調整条項を分割契約に盛り込むことがあるが、このような事案の「対価」を法律構成的に見ると、会社分割の実行時点で暫定的な支払いを受ける権利にプラスして、その後の対価の調整ないし確定結果に従い追加の支払いを受ける権利、あるいは、一部を返還する義務が付着した「権利」が「対価」であるとする見解がある(酒井竜児編『会社分割ハンドブック』p.90.)。このような見解に立てば「対価」が不明確であるとまでは言えないことになる。
そもそも、会社法第758条4号ホにおいても「額」に替えて「算定方法」によって対価を定めることを認めている。株式の交付を主として行う場合においても、クロージングまでの期間の資産の評価額の差額を金銭で調整するとする条項も、「算定方法」を定めることで可能となる。
一例として挙げると、楽天株式会社の公式サイトで公表されている平成25年11月の会社分割(承継会社はケンコーコム株式会社)の事案においては、対価として交付する株式数は、効力発生日前日の承継資産の評価額から承継負債の評価額を控除した額を、承継会社の株価(取締役会決議の直近1ヶ月間の平均値)で除した数とされている。https://corp.rakuten.co.jp/news/press/2013/1126_01.html
また、他の事例においては、分割会社の事業年度末の貸借対照表における承継事業に関する資産相当額から負債相当額を控除した金額に、効力発生日までの承継事業に関する当該差額の増減を清算し、対価を計算するとしたものもある(対木和夫編『会社分割の法務』pp.92-93.)。
そもそも、吸収分割契約において分割対価を定めなければならないとされているのは、吸収分割契約につき株主総会の特別決議を要する場合においては、吸収分割の対価が適正かどうかにつき、議決権を有する株主の判断を仰ぎ、株主が合理的な判断を下すのに必要な情報を提供し説明する機会を与えるためである。さらに、株主総会の特別決議を要しない略式・簡易分割(同法796条)に該当する場合においても、承継会社の株主や利害関係人に対し、分割契約の内容、対価の相当性についての事前開示義務(同法794条、同施行規則第192条1号)を求めることで、この要求に答えている。この事前開示義務を果たす限りにおいて、会社法においては、企業再編の対価について、一般的な制限を設けず、上場規則等のソフトローや実務の慣行(投資家の判断)に委ねる立場を採用しているのである(森本滋編『会社法コンメンタール17』pp.312-318.)。
このような観点からすると、調整条項を含んだ分割契約書の当該定めは、分割方法の「算定方法」を定めたものとして形式的な手続きが取られている限り、一応有効なものとして差し支えないと思われる。
仮に、このような「算定方法」の定めが不公正であると判断されたとしても、判例・通説はこれを吸収分割の無効原因にはならないとする(江頭憲治郎『株式会社法(第6版)』p.856, p.922, 最判平成24・2・29民集66・3・1784)。判断の基礎となる情報が適切に開示された上で適法な手続きを踏めば事実上、その条件は公正なものと推定される。分割対価の不公正自体は株式買取請求権、取締役らに対する責任追及によって補填されるべきであり、それ自体が法令違反になるわけではない、という考え方である(なお、著しく不公正な対価は無効事由にあたるとする見解も存在する。神田秀樹『会社法(第15版)』pp.340-341.を参照。)。
商業登記法(以下、「商登法」)第24条10号においては、「登記すべき事項につき無効又は取消しの原因があるとき。」を却下事由と定めているが、「算定方法」が不公正であるかどうかは形式審査の範囲では必ずしも明らかにならない。そして、会社分割の無効は訴えをもってのみ主張することができるとされており(会社法第828条9号)、商登法134条2号においては、訴えをもってのみ無効を主張できる内容の登記について当事者主義を排除している。その反面として、裁判所書記官は、無効判決が確定した場合において登記を嘱託しなければならないとされている(同法第937条3項4号)。さらに、仮に不公正な条件による会社分割が行われたとしても、無効の訴えが六ヶ月以内に提起されなければ、確定的に当該会社分割は有効になり(会社法第828条7号)、組織変更が覆されることはなくなる。
このような無効の主張に対する制限は会社の法的関係性の安定を保護するためのものであり、このような要請が重視される限り、明白な無効事由が存在しない限り、上記のような「算定方法」の定めをもって無効事由とみなすことは事実上困難であると思われる。よって、上記のような定めは商登法第24条10号の却下事由に該当しない、とするのが相当であり、算定方法の「相当性」を証する書面の添付なども不要であると考える。
ストックオプションの新規発行で、「行使の条件」として「業績条項」を付けたい、と。それで具体的な条件は「新株予約権割当契約」により定めるという。これは株主総会(公開会社では取締役会)でその「内容」を決定しているとは言えないので、登記事項となる「行使の条件(会社法第911条3項12号ハ)」としては認められないが、個々の予約権者との個別契約でそのような事項を定めることは差し支えない、というのが実務上の考え方となっている。
「行使の条件」は会社法第236条に定める「内容」には含まれていないが、これは必要的事項の列挙に過ぎず、行使の条件を定めた場合にはこれも新株予約権の「内容」となる(相澤哲ら編『論点解説 新・会社法』p.226.)。新株予約権の内容については法定の決議機関で定めなければならず(同法第238条2項、第240条1項)、新株予約権の行使条件に差を設けること自体は当然に違法というわけではないが、行使の条件も新株予約権の「内容」である以上、会社法238条5項の趣旨に基づき、一つの募集ごとに均等に定めなければならない。逆に言えば、募集ごとに均等に定めている限り、内容において差を設けることは認められる。例えば、従業員であることを条件に行使できる、とか、「ある者が発行済株式総数の20%以上を取得した場合にその者以外の新株予約権者が行使できる」とする条件も可能であるとされる(神田秀樹『会社法(第15版)』p.153、江頭憲治郎『株式会社法(第6版)』p.785.)。株主平等の原則は、新株予約権にも当然に適用されるわけではない。
ただし判例は、投資ファンドによる敵対的買収の際に、防衛目的で株主に対し新株予約権を無償発行した際に、行使の条件として、当該ファンドは行使できない旨を定めた事案につき、「株主平等の原則」の趣旨が及ぶと判示した事案もある(最判平成19・8・7民集61巻5号2215項、ただしこの事案においては会社の企業価値が買収により毀損される場合には、相当性を欠かない限り差別的取り扱いも許容されるとしている。)。
一方、内容の大枠については株主総会(公開会社においては取締役会)において決定する必要があるが、技術的・細目的事項については下位機関に委任することも可能であるとする見解があり、実務においてもそのようなやり方をしている例が見受けられる(荒井邦彦ら編著『新株予約権・種類株式の実務(第2次改訂版)』p.230.)。近時の判例では、株主総会で委任を受けて取締役会がストック・オプションの行使条件を定めた場合において、当該ストック・オプションの発行後にその行使条件を変更する取締役会決議は、明示の委任がない限り、細目的な変更を除き無効であり、また、非公開会社が株主総会決議で行使条件を定めた時は、その行使条件が重要な内容を構成している限りにおいて、当該行使条件に反したストック・オプションの行使は無効原因がある、と判示している(最判平成24・4・24民集66巻6号2908項。)。
重要な内容となる「行使の条件」を定めた場合にはこれを登記する必要が生じるが、細目の委任とはみなせない具体的な事項を個別の「割当契約」によって定めることは、会社法238条5項の趣旨に反し、また、新株予約権の「内容」となる事項を決議機関で決議しているとはみなせないので、認められない、というのが実務の考え方である。仮にこのような定め方をした場合には、当該事項は、発行会社と割当者との間に民法上の債権・債務関係を生じさせるに過ぎず、当該定めは登記事項にならず、第三者対抗要件を有しない、という考え方である。であるから、当然、当該事項の拘束力は債権的効力としてのみ有効である、ということになり、これに違反した行使があった場合には、民法上の債務不履行の責任を問われる形となると思われる。
業績連動型のオプションを付与する場合、個々の割当者ごとに異なる条件を付すインセンティブがあるのはむしろ自然なことであるようにも思えるが、何を新株予約権の「内容」とし、何が債権的合意で足りるのかを整理検討した上で、「内容」となるべき事項は新株予約権の募集事項に明確に落とし込むのが無難だろう、と思料する。